「立てるか?」 私と目線を合わすようにしゃがんだ彼は、いつになく焦った表情で。 ゆるゆると首を振ると、 「ったく…しょうがねぇな」 なんて言いながら、私をふわりと抱き上げた。 「っ…」 それは、いわゆるお姫様抱っこってやつで。 背中と足に回った、筋肉質の腕。 半袖のTシャツを肩まで捲り上げているせいで、強調される腕の筋肉。 そして少し汗の匂いと、朝比奈先輩の香水の匂い。 密着した身体に、さっきとは違うけれど頭がくらくらする。