溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「じ、実は昔、そんな風に思ってなかった人にいきなりキスとかされて、あれ以来、トラウマっていうか。

 男性不信っていうか」

「いや、そいつ、お前のこと好きだったんじゃないのか」

 それで、男性不信になられても、と多少同情気味に言う。

「大丈夫ですっ。
 頑張りますっ」

「いや、……頑張らなくていいから」

 悪かった、と昌磨は花音の頭をぽんぽんと叩く。

 余計申し訳なくなり、
「すみません」
と落ち込むと、

「いや、本当に俺が悪かった。
 なんか今、すごく可愛かったから」
と昌磨がこらちを見ずに言ってきた。

 えーっ。
 課長、今、なんて言いましたっ?

 酔った頭でも、なんだか褒められたらしいと言うのは伝わってきた。

 だが、ふと、不安になり、判断能力を失った頭と口が、その思いを全部しゃべってしまう。

「でも課長はあれですか。
 可愛いなと思ったら、誰にでもそういうことしちゃうんですか。

 イタリア育ちだからですか。

 確かにイタリアに居たら、女の子には声かけない方が失礼みたいな雰囲気がありますけど。

 課長、そのどっぷり日本人の、迂闊なこと言ったら、斬り殺すみたいな外見で、イタリア人気質っていうのはどうかと。

 女の子、みんな勘違いしちゃいますよ。

 いっぱい、可愛い人とか寄ってきて、私なんて近寄れもしなくなるじゃないですかーっ」

「……お前、今、息継ぎしたか?」

 そう言ったあとで、昌磨は、
「いや、とりあえず、今はお前が一番俺の近くに居るだろ」
と言ってくる。