「昔の演奏も好きですが、今の演奏も好きですよ。
円熟味が出てきたっていうか」
「お前、俺を幾つだと思ってるんだ……」
出るかそんなもの、と言われた。
金網の向こうを電車が通り、風と電車の窓からの光に煽られる。
昌磨を見ずに花音はうつむき、呟くように言った。
「課長、好きです」
「手がだろ」
「手もですが、演奏も。
大好きです」
と言うと、
「……他に言うことはないのか」
と言ってきた。
「ありませんっ」
自信を持って花音は言った。
「そうか。
困った酔っ払いだな」
昌磨は苦笑したようだった。
「……ところで、私の家は何処なんでしょうね?」
「は?」
「いえ、すみません。
大丈夫です。
今、一瞬、意識と記憶が飛びまして。
でも、大丈夫です。
今、拓海に砂をかけられ、お兄ちゃんにバケツで殴られたうちの庭の砂場が頭に浮かびました。
大丈夫です」
「欠片も大丈夫じゃないよな?」
砂場だけ思い出されても、と昌磨は言う。
円熟味が出てきたっていうか」
「お前、俺を幾つだと思ってるんだ……」
出るかそんなもの、と言われた。
金網の向こうを電車が通り、風と電車の窓からの光に煽られる。
昌磨を見ずに花音はうつむき、呟くように言った。
「課長、好きです」
「手がだろ」
「手もですが、演奏も。
大好きです」
と言うと、
「……他に言うことはないのか」
と言ってきた。
「ありませんっ」
自信を持って花音は言った。
「そうか。
困った酔っ払いだな」
昌磨は苦笑したようだった。
「……ところで、私の家は何処なんでしょうね?」
「は?」
「いえ、すみません。
大丈夫です。
今、一瞬、意識と記憶が飛びまして。
でも、大丈夫です。
今、拓海に砂をかけられ、お兄ちゃんにバケツで殴られたうちの庭の砂場が頭に浮かびました。
大丈夫です」
「欠片も大丈夫じゃないよな?」
砂場だけ思い出されても、と昌磨は言う。



