溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜





「よくやったな、花音っ」

「いや、芹沢、すげえよ。
 打つだけじゃなくて、雑な手書きをうまくはめ込みながらグラフも直したんだろ?」
と先輩が言ってくる。

 確かに、あのグラフは、どきどきものだった。

 もともとあまり図表の作成は得意じゃないから。

 それにしても、課長、花音って言ってますよ、と思ったのだが、みんな無事に終わった高揚感で気づいていないようだった。

 打ち終わった花音も参加して、総出でコピーし、並べ替え、ステープラーで止め、なんとか時間内に仕上がった。

「行ってらっしゃーいっ」
と昌磨たちを見送るときには、みな物凄い爽快感に包まれていた。

「芹沢さん、お疲れ様」
とたまたま備品を持ってきて行き合わせ、手伝ってくれていた総務のおばさまに肩を叩かれる。

「いえ。
 間に合ったのは、みなさんが凄かったからです」

 特にこのおばさまのステープラーさばきは見事だった。

 さすが、達人の技だ。

 たまたま廊下を通って、なんの騒ぎだ、と覗いてきた拓海に、
「拓海っ。
 やっぱり居るわよ、樹海のパソコンマスター。
 今日、心の目を開いた気がしたわっ」
と言ってみたが、参加してなかったせいで、みんなのこの高揚感が伝わらない彼は、なんの話だ、という顔をしていた。