「もう〜っ。
いちいち、拓海、うるさいんですよっ。
お兄ちゃんが二人居るみたいっ」
会社に着いた花音が、トイレで化粧直ししている香穂に愚痴ると、彼女は笑い、
「あら、私も沢木くんにうるさく言われてみたいわ〜」
などと呑気なことを言い出した。
「なんでですか」
と拓海に腹を立てたまま、腕を組んで、仁王立ちで花音は言う。
「だって、それだけ私のことを見ててくれるってことでしょ?」
なるほど。
そういう見解もありか。
自分とまったく性格の違う香穂の意見は、いろいろと斬新で、新しい見方を花音にくれる。
まあ、確かに面倒見はいいな、と思ったとき、香穂がこちらを向いて言ってきた。
「ところで、あんた、お兄ちゃん居るんだ?」
「居ますよ」
と化粧直しするわけでもなく、相変わらず、仁王立ちのまま花音は言った。
「ねえ、あんたと似てんの?」
と香穂はファンデーションを置いて、身体ごとこちらに向き直る。
「……似てる、かな?
目許はよく似てるって言われますが」
男と女では印象が違うので、わからない、と思った。
あっちは常にイケメン扱いで、今までの人生、モテモテだったようだが。



