花音に訊きかけ、昌磨はやめた。
まあ、イタリアに住んでたってだけだからな、と思う。
ちょっとの間だったと言っていたし。
だが、こいつの子供の頃というと、あの頃か、と思った。
同じ日本人なら、家族とかが注目してたんじゃないだろうか。
「花音」
「はい?」
と訊き返してくる花音の顔を見ながら、いや、確かめたら、ドツボにはまりそうだ、と思った。
「いや、なんでもない」
そう言い、前を向くと、横で激しくなにかが動く気配がした。
振り向くと、花音が両手を振って、じたばたしている。
「どうした」
と言うと、
「もうっ。
不用意に名前を呼ばないでくださいっ。
そのたびに、こっちはどきっとしちゃうじゃないですかっ」
と言ってくる。
いや、それをあっさり口に出す人間が、本当にどきっとしているのかは謎だがな、と思っていた。
「お前、俺の手だけが好きなんじゃなかったのか」
「いや、そうなんですけど」
そうなのか……。



