溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「だって、お前、本当に、助けてくれた手だけが好きだとか言いそうな奴だから怖いじゃないか」
と言う。

 昌磨は、本当に助けてくれた人と花音が出会わないよう、毎朝、遠回りをしても、迎えに来てくれていたようだった。

 だが、どのみち、彼は滅多に満員電車に乗らない人だったのだが。

「お前と出会って、俺はやっぱり情けない奴だと思い知らされた。

 あのコンクールのときと同じだ。

 大事なものを手放したくなくて、真実が告げられなかった」

「それはあれですか?
 私がピアノと同じくらい大事だっていう……」

「いや、そこまでかな?」
と言ってみせる昌磨に、もう〜っ、と言い、胸を押して離れた。

「でも、結局、私は騙されて、課長の罠にかかったわけですよね」

 そう言ってやると、人聞き悪いな、と昌磨がこちらを見る。

「こういうのハニートラップって言うんじゃないですか?」

「……違うだろう」

 あれ、基本的には、女が男を罠にかけるんじゃないか? と言ってくる。

「それから、課長じゃないって言ったろ」

「細かいですね。
 なんて呼ぼうと私の愛は変わりませんよ」

 少し膨れて昌磨を見上げる。

 こっちは怒っているのに、そんな花音の顔を見ていた昌磨は笑って言った。

「こういうのを言うんじゃないのか?」
「は?」

 ハニートラップって、と言って、昌磨は再び、花音を引き寄せると、キスしてくる。