二人の乗った車はすぐに着いた。
あのとき見た昌磨のマンションだ。
それを見上げながら、花音は言う。
「隣の部署の成田さん、同じマンションなんですよ。
知らなかったんですか?
課長らしいですねー」
昌磨の後について入りながら、
「ちなみに、江波さんも知ってました。
成田さんと親しいので」
と告げる。
『なにがついでよ』
あのとき、香穂はマスカラをコームで梳かしながら言った。
『課長の家、あんたんちとは反対方向でしょ。
すぐそこみたいだし』
そんな昌磨が、朝、あの電車に乗っていたはずはない。
背の高い拓海は本当は、誰が助けてくれてたのか知っていた。
だが、言わなかったのには、おそらく理由がある。
助けてくれた相手を見ていた拓海は、彼がそうだと、私に教えたくなかったのだ。
昌磨が現れ、私が彼が助けてくれた人だと言い出したとき、本当は違うと言いたかったのだろうが。
一度知らないと言った手前言えなかったのと、自分が言いつけるような形になるのが、拓海の性格から言って、耐えられなかったのだろう。



