溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「僕、朝は混むからあまり乗らないけど、夜はたまに乗るんですよ。

 いつか、電車に一緒に乗ってるのを見ましたよ。
 『情熱の貴公子』ですね」
と微笑む。

「ご存知だったんですか」

「そりゃもう。
 あの手を見ればわかりますよ」
と言われたので、

「……貴方の方が私より、昌磨さんへの愛が深いかもしれないです」
と言うと、はあ? と言われる。

 たまに電車で感じる視線はこの人だったのかな、と思った。

 ……手が見えないと気づかないし。

 はは、と笑う。

「ところで、飛鷹さん、もう弾かれないんですか?」
と言われたので、店のカードを渡しておいた。

 じゃあ、と挨拶をして別れる。

 花音は電車に乗るのをやめた。

 携帯を取り出し、昌磨にかける。

「お仕事、終わりました?」

 昌磨はまだだと言った。

 随分と素っ気ない。

 だが、それは自分の嘘に気づかれたと思い、構えているせいかもしれないと思った。

「今日、会いたいんです。
 八時には仕事終わりますか?

 エレベーターで待ってます」