溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「沢木とはもう頑張らなくてもできるんじゃないのか」
「いや、あれはいきなりだったからですよ」

「じゃあ、俺も言わない方がよかったんじゃないか?」

「そ……そうかもしれませんね」
と言いながら、車に乗り込む。

 シートベルトを締めながら、昌磨は、
「わかった。
 とりあえず、もう今日は送ろう」
と言ってきた。

 ほっとして、
「は……」

 はい、と笑顔で言いかけたとき、昌磨が助手席に手をかけ、身を乗り出してきた。

 思わず、逃げようとした花音の腕をつかむ。

 そのまま唇が重なった。

 花音は、閉じた目を開け、確認し、また閉じた。

 ……昌磨さんだ。

 拓海じゃない。
 昌磨さんだ。

 離れた昌磨が自分を見て言う。

「出来たじゃないか」
「そうですね……」

 少々放心状態だが。

「でも、途中で何度か目を開けて確認するの、やめろ」

「は、はい、すみません」
と言ったあとで、自分の行動を思い返し、笑ってしまった。

 少し笑った昌磨がもう一度、口づけてくる。

 今度は逃げなかった。