溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「俺がイタリアに居たとき、コンサートホールの近くの石畳みを歩いていたら」

 ひいっ、と花音は固まる。

「や、やめてください、怖い話っ」

「イタリアの幽霊が此処まで来ないだろう」

「幽霊なんて、瞬間移動するじゃないですかっ」

 ごちゃごちゃ言っているうちに、花音たちのフロアに着いた。

 携帯は無事に引き出しに入っていた。

「危ない危ない」
と呟きながら、鞄に入れ、昌磨の後について、再び、エレベーターに乗る。

「いっそ、階段で下りたいくらいですよ」

「じゃあ、お前、階段で下りろ」

 下で待ってる、と言われてしまう。

「課長、いまいちやさしくないですよねー」
と言うと、

「充分やさしいと思うが」
と言いながら、また花音の頭をつかむと、顔を外に向けさせた。

「ひゃ……っ」

 だが、上げかけた悲鳴を花音は吞み込む。

「……えーっ。
 すごい。

 なんで?
 この時間だと、まだこんなに明かりがあるんだ?」

 神戸などで見た夜景とはまた違う。

 すごく光が近い感じがあったが、思っていたより、かなり綺麗だった。