溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜




 うーむ。

 夜中の会社に、夜中のエレベーター。

 どっちもやだな。

 花音は昌磨の後をついてエレベーターに乗りながら、びくびくしていた。

 会社にはもちろん、一晩中人は居るし、エレベーターもガラス張りなので、或る意味解放的なのだが、やはり、ちょと怖い。

 なんでこんなことに。

 ああ、私が携帯を忘れたからか、と思う。

 花音は、エレベーターに乗ると、扉の方を向いた。

「花音」
「はい」
と振り向かずに、答える。

「見てみろ。
 綺麗だぞ」

「き、綺麗なのはわかってます」

「もったいないな」
と昌磨は夜景を見ているようだった。

 そうっと顔を半分だけそちらに向けると、昌磨と目が合い、笑われた。

「高所恐怖症の奴というのは、想像力が半端無いんだろうな」
と言ってくる。

「はあ、そうなんですかね?」

「暗がりにもいろいろ居るんじゃないかと思って、妄想するんだろ」

「……ないものに怯えてるのはわかってますよ」
と言うと、

「いや、ないことはない」
と昌磨は言い出した。