溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 だが、そこで花音は、
「だから、なにも気にされなくてもいいんですよ」
と言ってきた。

 なんの話だ、とその顔を見たが、彼女は、すぐに話題を変えてきた。

「課長、今日は本当に呑まないんですね」

「ああ、たまにはお前を送って帰ろうかと思って」
と半分開いたボトルを見ながら言うと、

「それで付き合って、お前も呑まないのか」
と花音のグレープフルーツジュースを見ると、ああ、いえ、と笑ってみせたが、それでなのだろう。

「だって、人が呑んでると、自分も呑みたくなるじゃないですか」
と言うので、

「大丈夫だ。
 俺はお前ほどの酒呑みじゃない」
と言うと、

「あの、なにやら誤解があるようですが。
 私、そんなに呑みませんからね……?」
と根拠もない思い込みのようなことを語ってくる。

「それから、私は別に送っていりませんよ。
 課長が車を持って帰りたい理由でもあるのなら別ですが」

 それは、朝、お前を迎えに行きたいからだろう、と思っていた。

 最初はある理由から始めたことだったが、今は、会社に着くまでのそのわずかな時間をとても大事に感じていた。

「じゃあ、俺も呑むから、お前も呑め。

 明日、迎えに行かなくていいように――

 今夜はうちに泊まるってみるか?」
と訊いてみると、花音は、えっ、と言って赤くなる。