溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「僕が前、花音さんを一人で座らせとくと、男が声かけてくるよって言ったからだね」

 え、と花音がこちらを見た。

 余計なことを、と舌打ちしそうになる。

「花音さんが他の男に誘われないよう見張ってるの?
 まるで、ストーカーだねっ」
とロクでもないことを笑顔で言ってきた。

 良、貴様……。

 だが、良は変に感心したように言う。

「昌磨さんがこんなだとは思わなかったなあ」
と。

 ああ、俺も思ってなかった、と思っていた。

 ボトルをテーブルに置き、溜息をついて言う。

「お前と出会ってから、振り回されてばっかりだ」

 いっそ出会わなければよかった、ともらすと、花音は、
「無理です」
と言った。

 真っ直ぐにこちらを見、

「だって、言ったでしょう?
 私たち、最初から出会ってたんですから。

 ああ、違いますね。

 私が一方的に貴方を見てただけですけど」

 そこまで言って、少し考え、
「演奏者から、客席は見えないんですか? あれ」
と言ってくる。

「見えなくもないが」

 そんなのじっと見るような余裕があるか、と思った。

 第一、そのときの俺はお前を知らなかったのに。