溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「だから、課長って言うな」

「知りませんっ。
 課長なんて、もう一生、課長としか呼びませんっ。

 もう、ぷんすかぴーです」
と言うので、呑んでいたボトルを落としそうになった。

「子供か、お前は……」

 そんな怒り方あるか、と言うと、
「ああ、これは、拓海と喧嘩しそうになったとき、こう言うことにしてたんです。
 子供の頃から。

 拓海が脱力して、怒る気が失せるみたいだから」
と言う。

「沢木の話もするなっ」

 よく考えたら、あいつが元凶じゃないか。

 なんで俺がこんなに余裕がないと思ってるんだっ、と思っている前で、花音は、
「なんでですかっ」
とまるでわかっていない風に言ってくる。

「もう、お前、いっぺん死んでこいっ」

 男心に鈍感なのにも程がある。

 そのまま二人とも黙り込んでいると、花音のグレープフルーツジュースを持ってきた良が言った。

「あっれー?
 どうしたの?

 なんで口きかないの、此処。

 そして口もきかないのに、なんで、この人は此処に居るの?」
とこちらを見る。

「……俺の勝手だろう」
と良からも目をそらし、言うと、

「ああ、わかった」
と良は笑った。