夜、店に来た花音は、頭を抱えて言う。
「もう完全に噂になってますよ~」
「嫌なのか」
花音の前で、炭酸水を飲みながら、昌磨は言った。
今日は車で花音を送るつもりだったからだ。
「嫌とか言うんじゃないんですけどー」
とぐずぐず言っているのが気に食わなくて、黙っていると、
「なに怒ってるんですか、もう~っ」
と言ってくる。
「お前が隠れて男とコソコソしてるからじゃないか?」
と言うと、
「隠れてコソコソなんてしてませんよ。
課長、意外と疑り深いですね」
と生意気にも反論してきた。
おまけに、ぼそりと、
「買収の件も、実は、単に課長が深読みしすぎただけなんじゃないですか?」
と目線を合わせず言ってきた。
その話題を振るとは、いい度胸だな、と思いながら、
「お前の浮気話と一緒にするな」
と頰を引っ張ると、花音は、いててて、と相変わらず、マヌケな声を上げた。
頰を押さえて花音は叫ぶ。
「課長が私を信用してなから、そういうこと考えるんですよっ」
手だけが好きとか言うような女を信用できるかっ。



