溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 とととっと異様に落ち着きがなく軽い足音なので、間違いないだろう。

 忍者か、と思った。

 エレベーターに乗ると、花音は一緒に乗ってくる。

 そして、乗っておいて、
「うわっ。
 乗っちゃった」
と言っていた。

「こんな空いてるときにっ」
と花音はガラスとは反対側を向く。

 高所恐怖症の花音は、人で視界が阻まれない状態で、このエレベーターに乗るのは苦手なようだった。

 ふーん、と思って、花音の小さな頭をつかむと、ガラスの方を向けてみた。

 ひあっ、と奇妙な声を上げる。

「やめてくださいーっ」

 なんの嫌がらせですかーっ、もうーっ、と叫んでいた。

 だが、まだ誰も乗ってこないので、そのまま、花音の頭を外に向けて、ホールドしていた。

「昌磨さんっ」

「会社で呼ぶなと言わなかったか?」

「外で課長と呼ぶなとは言いましたけど、社内で名前で呼ぶなとは言ってませんっ」

「ペラペラしゃべる余裕はあるんだな」
と花音の頭をつかんだまま、もう少し前に押してみる。

「なんなんですかっ。
 なに怒ってるんですかっ、もう~っ」

 沢木は仕方ないとしても、他の男とヘラヘラ話しているのを見るとムカつくな、と思っていた。