溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜




 昌磨は廊下の突き当たり、あまり人気のないところに居る花音を見た。

 誰かと笑い合っているらしい横顔が見えた。

 だが、相手は壁の陰になり、此処からでは、花音の姿しか見えない。

 沢木拓海だろうか?
と思ったが、そこまで花音の視線の位置が高くないような気がした。

 それに、なんだか少し、よそ行きな感じの微笑みだ。

 ああしていると、普通に大人しそうなんだが、と思いながらも、相手が女ではないような気がして、ムカついた。

「じゃあ、今度遊びに来てよ」
と声が聞こえてきた。

「はは……ありがとございます」

 出て来たのは、成田とかいう隣の部署の男だった。

 花音は成田が消えても、まだなにか考え込んでいた。

 人知れず近づいて観察していると、しばらくして振り向いた花音が、
「わっ、課長っ」
と叫ぶ。

「なに音もさせずに立ってるんですかっ」

「……お前、結構気が多いな」

「は?
 多くないですよ」

 そのまま花音を無視して、エレベーターの方に行く。

「課長?」
と花音が追って来た。