溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 


 拓海は遠ざかる昌磨の車を足を止め、見送っていた。

 『保護者』ね。
 さりげなく釘を刺していくな、あの人も――。

 花音も花音だ。

 あっさり、『昌磨さん』と呼ぶようになってるし。

 あの二人、今、どうなってるんだろう。

 まだ、二人の間に、なにもないのは、今朝の花音の様子を見てればわかるが。

 中学のときの自分の先走った行為が、今まで花音を恋から遠ざけていたとしても。

「さすがにもう効果なくなるよな……」

 っていうか、俺自身が遠ざけられてるし。

 花音の心に俺が打ち込んだ楔がいつまで持つか。

 いっそ、昌磨さんと一度付き合わせて、恋愛に対する抵抗をなくさせてから、俺が――。

 そこまで考えたあとで、いやいやいや、と思う。

 俺の可愛い花音を一度だけでも、他の男に渡すなんてっ。

 もうとっくに昌磨の車は居なくなっている道を見ながら、拓海は誓う。

 覚えてろよ、花音。
 俺は自慢じゃないが、しつこいからな〜っ。

 中学から今まで好きだとも言わずに、他の男が花音に近づかないよう張りついてきたのだ。

 ちょっと男前で、ちょっと手が綺麗で、ちょっとピアノが弾ける、花音の理想のような男が現れてもっ。

 俺は引かないからな、花音〜っ!

 既に誰も居ない道に向かい、拓海は心の中で吠えた。