溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 ちょっと沈黙が訪れる。

 なにを言ったものだろうか。

 えーと、……じゃあ? とか?
と思ったとき、昌磨が言った。

「ちょっと花音と出かけてこようと思うんだが、いいだろうか」

「昌磨さんっ、なに、拓海に許可とってんですかっ」

 いや、思わず、口から出て、と言っていた。

 昌磨もあまりこういう修羅場慣れしていないらしく、……いや、修羅場ってものでもないが、なにを言っていいのか、わからないようだった。

「だって、沢木は会社では、お前の保護者みたいなものじゃないか」

「ええーっ。
 私、仕事に関しては、拓海に迷惑かけてませんよーっ」

 揉めながら、どさくさ紛れに出発した。

「ああ、なんか心臓に悪かったです」
と言って振り返ると、拓海はまだ足を止め、こちらを見ていた。

 お前が窓開けるからだろ、とは昌磨は言わなかった。