溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 昌磨を見つめると、
「そろそろ帰るよ」
と言う。

「え、もう?」
と言うと、昌磨は迷ったようだった。

「じゃあ、二人で何処か行くか?」

 そう訊いてくる。

「あ、はい。
 でも、お邪魔じゃないですか?

 昌磨さん、おやすみはゆっくりしたいんじゃないですか?」

「まあ、お前の側に居ると、確かにゆっくりはならないが」

 うっ、すみません、と思った。

「一緒に居たいか、居たくないか、と問われたら、居たいかな」

 そう言う昌磨に、なんだか、ちょっと嬉しいような。
 その程度か、と問い詰めたいような。

 そんな無礼なことを考えている花音の前で、昌磨は、
「お兄さんはまだ電話中かな」

 ご挨拶して帰りたいんだが、と言う。

「電話出来てますかねえ。
 意外にヘタレですからね」
と毒づくと、

「……電話が出来ない兄と、キスの出来ない妹か」
と呟く。

 ものすごいヘタレ兄妹だな、と自分で思った。

 彰人が同意するかは知らないが。