溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「どうも向き不向きがあって」

「あ、そうですか。
 それに、スティック振ってて、手を怪我しちゃ困りますもんね」

「いや、そんなに気にすることもないが、昔……」
と言いかけ、昌磨は、なんでもない、と言った。

 気のせいかもしれないが、この間から、昌磨は時折、浮かない表情を見せているような。

「昌磨さん。
 なにか困ったことでもあるのなら、言ってください」

 そう言ってみたが、
「いや、お前に解決できるようなことはない」
と言ってくる。

「……ですよね」

 そう言い、スティックを置きに背を向けた。

 丸いスティックが転がるので、落ちないよう、少し屈んで、何度か置き直していたら、ふいに背中が温かくなった。

 昌磨に抱き締められているのだと、少し遅れて気がついた。

 耳許で、昌磨の声がする。

「このくらいでも駄目か」

「そ、そんなことはないです」

 そうか、と言った昌磨はそのまま、花音を抱いていた。

 しばらくして、
「……ちょっと沢木を殴りたくなってきたな」
と言う。

「そ、そうですか」

 今朝のこととか、絶対話さない方がいいな、と思っていた。

「花音……」
「は、はい」
と身じろぎひとつ出来ず、固まったまま返事をすると、昌磨は、

「いや、なんでもない」
と手を離した。