溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 

 昌磨が続けて二曲弾いてくれて。

 おまけにもう一曲つけてくれたので、彰人は大満足のようだった。

「お母さんたちに恨まれちゃうね。
 私たちだけで聴いて」
と花音は笑う。

 彰人はおもむろに立ち上がり、昌磨の肩を叩くと、
「貴公子、ありがとう。
 さあ、花音の部屋へ行け」
と言った。

「ちょっと、なに、SFとかに出てくる賢者か預言者みたいなこと言ってんの」

 それから、貴公子はやめてあげて、と言うと、
「じゃあ、昌磨」
と言い出した。

「だーかーらー、お兄ちゃん、昌磨さんの方が年上なんだって」

 昌磨は笑い、
「昌磨でいいです、お兄さん」
と言ってくれる。

 そこで、二人ともフリーズしていると、昌磨が不安そうに、
「どうかしましたか?」
と訊いてきた。

「いや……」

「いや、なんとなく感動しちゃって」

 あの情熱の貴公子にお兄さん、と演奏のあと言われたことで、彰人は感動したようだ。

 私は私で感動していた。

 そう言えば、昌磨さん、さっきからずっと、お兄ちゃんを、お兄さんって言っている。

 まるで、昌磨さんと結婚したみたい!

 浮かれる花音の頭に、
『でも、お前、誓いのキスで逃げ出す女だけどな』
と言う幻聴が彰人の声で聞こえたが、とりあえず、無視することにした。