溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「いいですよ。
 花音のリクエストとお兄さんのリクエストを一曲ずつ」

「すみません。
 ありがとうございます。

 この間、店で、よしよしくんが弾いてるのを聴いて。

 よしよしくんの演奏が意外に良かったので。

 昌磨さんが弾いたら、どんな感じなんだろうなって、余計に思っちゃって」

「店?」
と彰人が振り向く。

 あわわわわ。
 しまった。

 余計なことを、と思っていると、
「いや、花音。
 もういい」
と言い、昌磨が立ち上がる。

「お兄さん、此処で弾いてるんです。
 今度聴きに来てください」
と地図の入ったショップカードを渡していた。

「そうだ。
 その鳴らない電話の彼女と来たらいいじゃない」
と花音が言うと、

「鳴らないは余計だ。
 それに、今は貴公子の演奏を聴くのに切っている」
と言う。

「なに言ってんのよ、お兄ちゃん。
 音切っても、握ってなさいよ。

 震えたらわかるでしょ。

 日曜に出なかったりしたら、他の人とデートしてるのかと思うじゃないのよ」

「いや、お前……他にも日曜の過ごし方、あるだろ?」

「だって、不安になるのよ。
 そういう時期でしょ?」
と言うと、彰人は振り向き、昌磨に、

「……だそうだぞ」
と言っていた。

 昌磨が笑う。