美味しいケーキをいただいて、兄が見事な手さばきで中国茶を淹れるのを見た。
それを飲みながら、花音がくだらない雑貨ばかり買ってくると言う彰人の不満を聞いていたのだが、そのうち、彰人がそわそわし始めた。
うん。
その視線から要求していることは丸わかりなんだけど。
どうかなあ、とちら、と横の昌磨を見上げる。
昌磨もわかっていたようで、少し笑い、
「じゃあ、よろしければ、少し弾きましょうか」
と言ってきた。
「すまんな。
ちゃちなピアノで」
「……お兄ちゃん、お父さんに殴られると思う」
確かにアップライトのピアノだが、自分が楽器メーカーに就職してわかったのだが、かなりグランドピアノに近い音が出るいいものだ。
昌磨はもちろん、わかっているだろう。
「いいピアノですね」
と少し音を出してみて言う。
「花音はすぐに投げたけど、俺は結構長く弾いてたから」
と言ったあとで、彰人はちらと窓の方を窺い、
「でも、音出すと、貴公子が来てるのが、拓海にバレるな」
と言った。
「車で既にバレてると思うけど。
あ、じゃあ、いっそ呼んでこようか」
と言うと、待て待て待て、と彰人が言い、二人で花音の襟許をつかんできた。



