っていうか、よく見たら、この木、さっき、自分が拓海と靴を洗っていた場所の真横ではないか。

 話聞いてたのか? と思う。

 花音の視線にそれがバレたと気づいたらしく、彰人は、
「また、拓海を脅す理由ができたな」
と言ってくる。

「これでしばらく靴は自分で洗わなくていい」

 いや、お兄様。
 見てたのなら、止めてください……と思った。

「ところで、今日は貴公子とデートしないのか」

 その呼び方やめてあげて、と思いながら、
「いや、日曜くらいゆっくりしたいかと思って」
と言うと、

「呼んでこいよ。
 意外と電話かかるの待ってるかもしれないぞ」
と言い出す。

「なんでそう思うの?」

「……俺もさっきから、電話を待ってるからだ」

 よく見たら、ハンモックの中に携帯もあった。

 笑ってしまう。

「もしかして、彼女と喧嘩して、此処に来てるの?」

「お前らが心配だから来たのに決まってるだろうが」
と脳天に手刀を落とされる。

 そ……そうだったのか。