溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「いや、なに、しれっと言ってんのよっ」

 なんで急に……と言いかけると、拓海は、
「なんでもなにも好きだからに決まってるだろ」
と言った。

 展開についていけずに、花音は固まる。

「ずっとお前が好きだったんだ。

 でも、あのときのことが、お前の中でトラウマになってるんだろうな、と思って、なにも言わなかった。

 そしたら、突然、なんとかの貴公子とやらが現れて、お前をさらって行こうとしている」

 俺は何処で間違ったんだろうな、花音―― と拓海は言った。

「あのとき、強引にお前を自分のものにしておけばよかったのか?」

 そ、それは犯罪ですよ、と思ったが、今の拓海にそんな軽口を叩く勇気はなかった。

「正直者が莫迦を見るってことか?」

 いや、それも違う。

「それとも、単に、いつまで側に居ても、お前は永遠に俺を好きにならないってことなのか?」

「す、好きじゃないってこともないけど。

 でも……ずっと側に居たからわからない」
と正直なところを言うと、拓海が訊いてくる。

「中学生のとき、俺がキスしようとしたら、泣いて逃げたよな。
 あれは、俺が死ぬほど嫌いだったからか?」

「いや、死ぬほどなんて、一言も言ってないけど……」

 こいつも、ちょいちょい私を悪役に仕立てようとしてくるな、と思っていた。