溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 花音は、拓海が洗って、真っ白になった靴を日にかざし、眺めた。

「うーん。
 私のはイマイチ。

 力の差かな?」

「お前は普段やらないからな」

 コツがあるんだよ、と拓海が言う。

 そうかー、と花音は力を入れて、スニーカーをこすり直そうとする。

 その手を上から、はたかれた。

「コツがあるっつったろ。
 闇雲にこするなよ。

 お前、相変わらず、人の話を聞かねえな」

「だってさー」
と言いながら、花音は水しぶきの飛んだ頬を手の甲でこすって、拓海を振り向いた。

 拓海が自分を見ていた。

 いつもとは少し違う表情で。

 ふいに草の上に手をついた拓海は、身を乗り出し、口づけて来ようとする。

 え……。

「ちょ……っ」

 花音は逃げようとして、地面に尻餅をついた。

「いてっ」

 あいたた、と腰を押さえると、
「……汚れるぞ」
と冷静な声で拓海が言う。

「いや……今の、あんたのせいよね?

 もうっ。
 急になにするのよ」
と言ってみたが、

「なにって、キスしようとしたんだろ?」
と拓海は言ってくる。