彰人が去ったあと、花音はもう一度、その動画を見た。
演奏のせいだけでなく、涙が出そうになった。
こんなすごい人が何故、ピアノをやめなければならなかったのか。
技術以前に、ピアノに対する情熱が他を圧倒する昌磨の演奏。
花音は迷って、ぐるぐる部屋の中を回ったあとで、ベッドに飛び込み、布団をかぶると、携帯をかけた。
すぐに昌磨が出る。
「すみません」
と花音はまず謝った。
「見ちゃいました、動画」
『いや、見ると思ってた』
むしろ、電話がかかるのが遅いと思っていた、とあっさり昌磨は言ってくる。
『帰るときのお前の、変に覚悟を決めたような顔つきを見ていたら、絶対そうするだろうと思って』
「でも、兄がパソコン直してくれてなかったら、見られませんでしたよ。
いや、でもまあ、気分的には、拓海の部屋に押しかけてでも見せて欲しい感じだったんですけど」
と言うと、
『……それはやめろ』
と言われた。
これ以上、トラウマを増やすなと。
いや、別に今の拓海は私をどうこうしようというつもりなどないと思うが、と思っていた。
あのときのことだって、中学生にありがちな、興味本位の行動だったのではないかと思っている。
そう言うと、
『本当に人でなしだな』
と罵られた。



