溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 今の話を追求したかった。

 だが、花音は既に、動画の中の昌磨に魅入っていた。

 幼い昌磨の弾いている指先は撮っている角度のせいで見えないが、確かに今より少し雑かもしれない。

 感情が前に出すぎていて。

 でも、なんでだろう。

 涙が出た――。

「すごいよな、お前の貴公子様は」

 後ろで、ぽそりと彰人が呟く。

「俺はもう前にこれ見つけて、見てたんだけどな」

「えっ?」

「……聴きたいなあ、花音。
 今のこいつの演奏を」
と冷たい目で見る。

 うっ。

「ひ、ひとりで聴いてて、すみません」
と言うと、腕を組んで立つ彰人は鷹揚に頷く。

「すっかり仏頂面の大人になってるが、もともと愛想のいい子供じゃなかったから、そんなに演奏も変わらないんじゃないか?」

「そんなことないよ。
 全然違うよ。

 今はすごく静かなんだよ。

 まるで、パソコンの森の奥のパソコンマスターだよ」

「うん。
 お前の言うことは、よくわからないが、すごいことは伝わってきたぞ」

 さすが兄、そう言ってくれた。

「それに……やっぱり、情熱の貴公子だと思うよ。
 あんなに静かに弾いてるのに。

 今の方が、うんと凄い」

 静かに染み渡る情熱とでも言うか。