溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 責めるように昌磨が見る。

「いえ、すみません。
 あんなすごい演奏するのに、昌磨さんみたいな人でも自信がないんですね。

 それならきっと、私のドラムなんて、恥ずかしいから叩くなよ、くらいのもんでしょうね。

 まあ、今回は貴方がたのご要望で叩いたんですから、文句は言わせませんけど?」

 言ってないだろ、文句なんて、と昌磨が言う。

「それに、俺はお前の演奏が好きだ。
 余計な飾り気がなくて、真っ直ぐで、ちょっと笑える」

「……最後のはいらなくないですか?」
と言うと、昌磨は笑った。

「でも、課長に褒められて嬉しいです。
 今度、よしよしくんに、ドラムスティックの回し方を習おうっと」

「お前、どっちに向かって行くつもりだ……」

 そのうち、良とステージに立ってるんじゃないだろうな、と言われた。

「花音」

 はい? と見上げると、急に肩を抱いて向きを変えさせる。

「こっち行こう」
と左手にある狭い通りを指差す。

「なんでですか?」

 駅から少し離れるのに、と思っていると、
「お前、言ってたじゃないか。
 そこの辺りを通ると俺がおかしくなるって」
と前方の線路沿いの金網を指差す。