溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 ピアノもやってみたかったんですけどね、とぽそりと呟く。

「小さいときに一度投げて以来、苦手意識があるというか。

 まあ、そもそも、ああいう細かい動きが苦手なので」

「性格がザックリしてるからかな」

 ザックリって……。

「でも、お前の演奏、良は随分気に入ってたみたいだ。
 もうちょっと一緒にやりたそうだった」

 意外な好演にか、良が、
『すごいじゃんっ。
 花音さんっ』
といきなり抱きついてきた。

 昌磨に、
『トラウマを増やすなっ』
と言われて、引き剥がされていたが。

「花音」
「はい?」

「お前んちの親御さんは音楽好きなのか?」

「さあ? どうなんでしょう?

 みんな聴くのは嫌いじゃないみたいなんですけど。
 自分で楽器やったりって言うのは、あんまりないかもですね」

「前も良が訊いていたが、カノンという名前は親が音楽好きだからじゃないのか?」

 ああ、あれは……と花音は、ははは、と頭を掻く。