溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「音大出たんだけど、友達の影響で、違う方面に行っちゃってさ。

 あ、信じてないね?

 ちょっとだけ弾いてあげようか。
 マスターいい?」
と良がカウンターに向かって言い、グラスを片付けていたマスターが笑って頷く。

 良はエプロンをつけたまま、かなりアレンジしたFLY ME TO THE MOONを弾いてくれた。

「えっ。
 よ、よしよしくん凄いっ」

「いやー、どうもどうも」
と良は普段、ライブのときにやっているのか、大観衆の歓声に応えるように大きく手を振ってみせる。

 今、聴いているのは、三人だけだが。

「そういえば、花音さんって、ほんとに楽器できないの?」

「あー、ドラムなら叩けるかな、ちょっとだけ」

 すごく単純なリズムなら、と花音が言うと、

「……あの、サルが叩く感じじゃないよね?」

 良は、そう言ってくる。

「オモチャの?」

 見つめ合い、花音は、はは……と引きつった笑いを返す。