溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 いや、別の彼氏でも誘って、というところに対しての、わかったー、ではなかったのだが。

 返事のタイミングが悪かったか、と思った。

「だってさあ、昌磨さん、来ないんでしょー」

 薄情なんだからもう、と良が言うと、
「お前たちの演奏はジャカジャカうるさいばかりだからな」
と昌磨は眉をひそめて見せる。

 モップを床に突き立てると、良は顔をしかめて言った。

「あ、全否定」

 花音は写真入りの黒いチケットを眺めながら、
「なんかビジュアル系バンドっぽいのばっかり出る感じね」
と言うと、

「そうなんだよ」
と良は言う。

「よしよしくんは、こういうのが好きなのに、なんで此処でバイトしてるの?」

「いや、もともとは普通にピアノとか弾いてたんだよ。
 親が好きでさ。

 バイオリンも習ってた」

「良は結構上手いぞ」
と昌磨が言い、良は、

「昌磨さんに褒めてもらうとは光栄」
と笑っていた。