土曜日、花音はちゃんと演奏を聴きに来てくれた。
終わったあとで、花音の席に行くと、
「素敵でしたっ」
とまだ手を叩いている興奮状態の花音が待っていた。
こいつ見てると不安になるなってくるな。
本当に手と演奏だけが好きなんじゃないだろうな……。
そこで一緒に、一杯呑んだ。
「課長」
……課長じゃないって。
花音は俯き、少し赤くなって言う。
「最近、なんで毎朝、迎えに来てくれるんですか?」
「迷惑か?」
「迷惑じゃないですけど。
申し訳ないっていうか……」
「沢木がひとりになるからか」
「ああ、そうですね。
拓海、ひとりで行ってるんですよね。
でも、そのせいで、可愛い女子高生から声をかけられたみたいですよ」
と花音は笑う。
「そうか、それはよかったな」
と言いながら、薄情な女だな~と思っていた。
まったく沢木拓海の気持ちに気づいていないようだった。



