溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「もうひとつ、俺が本気なところを見せましょうか」
とそこでようやく悪戯っぽく笑って、拓海は言った。

「本当は他の会社に就職したかったんです」

「……それは会社の人間からしたら、じゃあ、出て行けって感じなんだが」

「今は此処が好きですよ。
 でも、あの頃は違う職種に就きたかった。

 だけど、花音が此処にするって言ったから。

 びっくりしましたよ。
 あの弾けなくもないけど、時折、楽譜読むのも怪しいような奴が、なんで、楽器メーカーなのかって。

 たぶん、貴方のせいだったんですね。

 『情熱の貴公子』」

 ちょっと気になったので、昨夜、ネットで検索したんですよ、と拓海は言った。

「便利な世の中ですよ。
 誰かが動画を上げてくれていて、貴方の演奏も聴けた。

 あれ、花音は知っているんですかね?」
と言ってきたので、

「いや……俺も知らないくらいだから」
と答える。

 過去の俺の演奏。

 いつのだろう。