溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「トラウマ?」

 知らないのならいい、と言ったが、拓海は聞かなかった。

「……君は昔、花音になにかしたことがあるのか?」

「ある、と言ったら、どうなんですか?」

「花音が君になにも言わないのに、俺が言うことはできないな」
と言ったが、さすが、それだけで、拓海はすぐに理解したらしく、

「あれがトラウマになってるんですね」
と言ってきた。

「それで落ち込んで帰ってきたのか……」
と呟く。

「君は、花音になにをしたんだ?」

「なにって程のこともしてないですよ」

 ただ、キスしようとしただけです、と拓海は言う。

「中学生の頃ですが。

 でも、花音にはそれがショックだったみたいで。

 相手が俺じゃなかったら、また違ったんでしょうけどね。

 ずっと兄妹みたいに育ってきたから、驚いたみたいで。

 まあ、俺的には、ショックを受けられたことがショックだったんですが。

 で、花音には、ちょっとふざけてやっただけだ、と言いました」

「ふざけたんだったのか?」

「そういう状況になったら、そう言うしかないでしょうが。

 せめて今の関係は壊したくないと思ってたし」

「君は、それでもまだずっと花音の側に居るのか」

「感動的でしょ」
とまったく感情のこもらない声で、淡々と拓海は言ってくる。