「花音。
花音ー」
なにやら母の猫撫で声が聞こえてきた。
洗面所に居た花音がそちらに向かうと、昌磨が玄関に居た。
「課長っ。
どうしたんですか?」
あまりに意外な人物の登場に、花音は思わず、声を上げる。
「いや、ちょうど便があったから、乗せていってやろうかと思って。
支度まだだったか」
と言う。
「もう……」
「もう出来ますから、お待ちください」
と人の言葉を奪い取るようにして、母親は言い、
「ささ、どうぞ、どうぞ」
とダイニングに通して、いそいそと紅茶などを出している。
キッチンに行き、
「お母さん……」
と言うと、
「凄い素敵な人じゃないっ。
何者?」
と言ってくる。
「うちの課長だけど」
「あら?
課長って、あの可愛らしいおじさんじゃなかったの?」



