溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「話があるだけだよ。

 ……なにもしない」
と拓海は言った。

「じゃあ、ちょっとだけよ」
と言うと、窓から来ようとする。

「無茶しないっ。
 下りてきてっ」

 はいはい、と拓海は窓を閉めた。

 子供の頃は、窓を出て、木を伝って、塀に上がって、また木を登ってやってきていた。

 子供心に、絶対下から歩いて来た方が速い……と思っていたのだが。

 玄関の鍵を開けに下りると、
「お邪魔します」
と小さく言って拓海は上がってくる。

「なにか飲む?」

「いいよ。
 おばさんたち、寝てるんだろ」
と言うので、一緒にそっと二階に上がった。

 部屋に入るなり、拓海が言ってくる。

「どうした。
 課長となにかあったのか」

「ピンポイントで突いてくるわね〜」
と睨みながら、ラグに腰を下ろす。

「なにかあったって言うかさ」
と溜息をついた。

「私は、誰にもなにもしてあげられない半端な人間だな、と思って」