溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜





 窓になにかがぶつかっている。

 眠れないまま布団でじっとしていた花音は顔を上げた。

 知らぬふりをしようと思っていたのだが、いつまでもしつこく、ぶつかる音はしていた。

 もう〜っ、と起き上がり、窓を開ける。

「拓海っ」
と言った瞬間、額に小さな柔らかいものが当たった。

「あ、すまん」

 部屋の中に転がり落ちたそれは、小さく切られた消しゴムだった。

「起きてたのか」
とまだ手に残りの消しゴムを持ったまま拓海が言う。

「寝てたわよ……っ」

 小学生かっ、と睨む。

 時間的に言って、拓海は、あれからすぐに帰ってきてくれたようだった。

 悪いことをしたと思いながらも、
「あんた、子供のときとやること変わらないわね」
と文句を言うと、

「いや、携帯にかけようかと思ったんだが。
 寝てたんなら、起こしたら悪いな、と思って」
と言う。

「……起こしたじゃん」

「本当に寝てたら、このくらいじゃ起きてこないだろ」

 まあ、それは確かに。

「なあ、そっち行っていいか」

「やだ」