溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

「本当ですよ。
 立ち上がって、めちゃ手を叩いてましたもん」

「立ち上がって?
 テレビで見てたんじゃないのか?」

「いいえ。
 ああ、うちのお父さんの上司の娘さんが課長と同じコンクールに出てたんで、チケット都合してもらって、見に行ってたんですよ」

「……本当か?」

「素晴らしかったです。
 私は迫力に吞まれてしまって、しばらく虚脱状態で座り込んでしまいましたけど。

 ……課長?」

 昌磨は立ち上がり、あのジャケットを手に取りながら言った。

「なんで俺がコンクールに出たりするのをやめたか知ってるか?」

「いえ」

 そうだろうな、誰も知らない、と振り向く。

 レコードの詰まった棚を背に昌磨は言った。

「あのときの優勝は俺の実力じゃない」

「え」

「たぶん、他のときのも。
 いずれ、いい会社の宣伝になると思ったうちの父親が手を回してたんだよ」

「それ、誰かが嫌がらせで言ったんじゃないんですか?」