溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 昌磨は早速、さっきのバイオリニストのレコードをかけてくれた。

 棚に、そのジャケットを立ててくれたので、ソファに座り、それを眺めながら聴く。

「なにか呑むか?」
と昌磨がキッチンから訊いてきた。

「あ、じゃあ。
 吞み過ぎたので、お水を」
と言うと、アンティークな感じの素敵なグラスに、よく冷えた水が入ってやってきた。

 つめた、と思いながら、花音は、それを飲み、部屋の中を見回す。

「そういえば、課長のレコードってないんですか?」

「誰の?」

「情熱の貴公子は結局、レコードとかCDとか、出してないんですか?」

「……そういう話もあったが、自分でまだそれ程の腕前じゃないと思ってたから」

「そんなことないですよっ。
 出てたら、絶対買ってましたっ。

 うちの兄なんかもう絶対!」

 興奮して言ったあとで言う。

「す、すみません。
 ああ見えて、兄は情熱の貴公子の大ファンなんです」

 すると、案の定、
「……そうか?」
と胡散臭げに言われた。

 あの兄の態度を見ていたら、とてもそうは見えなかったからだろう。