溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 だがしかし、考えてみれば、最初からおかしな話だ。

 課長のような人が私なんかに、こんなに親しくしてくれるなんて。

 もしや、これは罠!?
と思ったが、思った自分が、なんの罠なのか、まず、思いつかなかった。

 私を騙しても、なにもいいことなんて、なさそうだしな、と思う。

 それにしても、ロビーも落ち着いた感じで素敵だな、とエレベーターの横に活けてあるカサブランカを見た。

 いい香りが辺りに漂っている。

 そして、セキュリティがどうの言うわりには、昌磨は部屋番号などは抵抗なく見せてくれた。

 なんなんだ、と思いながら、部屋に入る。

 マンションのイメージと同じ、重厚な雰囲気の家具に、オーディオ。

 グラウンドピアノが部屋の真ん中辺りにぽんと置いてある。

「どっかのサロンみたいですね。
 生活感がないですが。

 あ、このスピーカー、お兄ちゃんが持ってるのと同じです」
と言うと、

「お前の兄さん、マニアだな」
と言われた。

「そうなんですかね?
 よくわからないんですが」

「あの人、幾つなんだ?」
と訊かれ、

「二十八です」
と答えると、

「……俺より年下じゃないか」
と顔をしかめる。

「偉そうでしょ? すみません」
と花音は笑った。