溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜

 ちょっと服をつかむと、
「隙間から覗くな」
と言うので、慌てて手を離した。

 昌磨は、運転手に、
「すみません。
 彼女、さっき、電柱で顔面を打って青あざに」

 人に見せたくないらしいです、と適当な作り話をする。

「そりゃあ、大変でしたね」
と信じたのかどうなのか、運転手は言ってきた。

 しかし、リアルだな。
 私にとっては。

 私が本当にやりそうな話だ、と思いながら、花音は聞いていた。

 やがて、車を降ろされ、マンションのエントランスらしきところに立つ。

「このまま行ったら、管理人が飛んでくるな」
と呟き、昌磨は服を取ってくれた。

 いろいろと気にしなくとも、セキュリティのしっかりしていそうなマンションだった。

「もう~、なんなんですかっ」
と開けた視界と楽になった呼吸を堪能しながら、文句を言ってみたが、昌磨は、ただ、

「いや、セキュリティ上の問題だ」
とだけ繰り返す。

「なんでですか。
 私、貴方のストーカーじゃないんですけどっ?」
と言うと、

「そりゃそうだ。
 ストーカーだと思ってたら、自ら部屋に入れたりしないだろ」
と言ってくる。

 そりゃ、ごもっとも。