うわー、課長の匂いがする、と思いながら、花音はそのまま上着をかぶっていた。
いい香り。
あったかいし、このまま寝そう。
「花音、花音?
窒息してないか?」
黙っているので、不安になったらしい。
「あっ、生きてますっ」
と慌てて答える。
程よく呑み屋から出て来たタクシーがつかまったようだった。
「よし、乗るぞ」
「はい」
と言って手を引かれるが、よく考えたら、これ、変な人じゃなかろうか、と思った。
「ちょっと待ってろ」
と言われ、立っていると、また、
「よし」
と言われ、タクシーに乗せられる。
タクシー独特の匂いがしたから間違いないだろう。
足許も見えていないが。
乗ると、車はすぐに走り出す。
「課長、これ、いつまで……」
言い終わらないうちに、即行、
「着くまでだ」
と言われる。



