「すーばらしかったですっ。
さすが、課長がお薦めなことはありますねっ」
あの線路沿いの道を歩きながら、上機嫌の花音が言う。
相変わらず、的確な表現で、今日の演奏を褒めてくる。
そのようには見えないが、意外に音楽を聴き込んでいるのかな、と昌磨は思った。
酒のせいだけでなく、頬を上気させてしゃべる様が可愛くもあり、つい、花音の腕をつかんでいた。
良の話を思い出す。
誰かを好きになるとかよくわからないが、今、花音を誰かに取られたら嫌だな、とは思っていた。
「待った、課長っ」
と顔を近づけた自分に花音が叫ぶ。
「お前、課長に戻ってるぞ」
ほんとに良たちにつられただけだったんだな……。
「私、そういうの駄目なんですってばっ」
と言う花音に、
「お前、一生それで生きていく気か?」
とつい説教じみたことを言ってしまうが。
勝手に迫っておいて、そういうこと言うのもどうなんだ、と自分で思っていた。
「いや……一生とか言われても困りますが」
と花音は、ごにょごにょと言っている。
「それはあれか。
俺とは出来ないが、この先、別の誰かとは出来るかも、という意味か」



