「いつも可愛らしく頼んでませんでしたっけね?」
と言ったあとで、

「よくみんなが頼んでるから、たまにはと思って頼んでみたんですよ。

 昔は美味しいと思ってたんですけど、今呑むと甘すぎですね」
と言うと、

「うーん。
 作るお店にもよると思うけどね。

 わかった。
 花音さんのときには、あんまり甘くなくするよ」
と良は言う。

「ありがとうございます」
と微笑んだが、良は、

「まあ、次からはもう頼んでこない気がするけどね」
と笑って行ってしまった。

 そのあとで気づく。

 今、よしよしくんデートって言ったかな。
 昌磨さんも別に否定もしなかった。

 やっぱり、これって、デートなんだろうか。

 だが、昌磨は特にそんな甘い雰囲気も出して来ず、今日の演奏者のパンフレットを見ている。

 有名なバイオリン奏者らしいのだが。

 マスターと懇意にしているので、店で弾いてくれることになったようなのだ。

「なんだかわからないけど、楽しみです」
と笑うと、

「なんだかわからないけどって言うところがお前らしいな」
と昌磨が言ってくる。