「今度機会があったら、課長に訊いてみるよ」
と言うと、

「いや、訊かなくていい。
 訊かないお前だから、側に置いてるんだろ」
と言い、ぽんぽんと頭を叩いてきた。

 何処か昌磨の仕草にも似て見えた。

 だからかな、と思う。

 彼に少し懐かしさを感じるのは。

「なんで私を側に置いてるのか、ねえ。

 私が可愛いからとか?」
と笑ってみせたが、

「そりゃないだろう」
とバッサリ切り捨てられる。

 ……お兄様。
 冗談ですよ、もちろん。

 身内は厳しいな、と思っていた。

「さあ、拓海を軽く虐めてから帰ろう」

「お兄ちゃん、なんで帰ってきたら、一度は拓海にちょっかいかけに行くの」

 まあ、それも仲が良いということかな、と思っていると、
「いや、あいつには怒りを分散してぶつけてるから」
とわからないことを言い出す。

「じゃあな、花音。
 次に会うのは、正月か、来週だ」

「ちょっと、差がひどいみたいなんだけど」

 ほぼ一年後と来週じゃ、全然違うんだけど、と思い、そう言うと、彰人は腕時計を見ながら、
「出張次第だ」
と言ってくる。

 はいはい、と香穂にしたように、適当に相槌を打った。