だけど、そんなある日、
私は友達と話しながら帰路についていた。
「あ、やばい。
参考書忘れた。」
「はぁ?やばいでしょ?
うちらもう受験生だよ?
今なら間に合う、桃走れ!」
「う、うん!」
私は全力疾走で走り出した。
机に置いてきちゃったかな。
学校について教室に走った。
「あ、あった。」
机の上に参考書が置いてあって、
思わず笑顔で抱きしめた。
ガラッ。
私は驚いて振り返ると、流星くんが立っていた。
「りゅ、せいくん。」
「おー、」
無言の空気が漂う。
「りゅう「流星っ!!」
切羽詰まった声が、
教室に響いた。
夏樹の、泣いてる声。
ズキっと痛む胸。
流星くんは怪訝な表情をして
振り向いた。
私より少しだけ低い背の夏樹は、
守りたくなるタイプだ。
夏樹は、走ってきたのか、
そのまま、流星くんに抱きついた。
私は目の前が真っ白になった。
動けなくて、だけど歪む視界。
オレンジ色の教室に、抱き合う二人と、
参考書を抱えた女。
ポロっ。
涙がこぼれたのと、声がきたのは同時だった。
「純也にふられたぁっ。
全部っ、全部っ、捧げたのに。」
その言葉に、
参考書が手元から落ちた。
どんっ、
「あ…
ごめんなさいっ。」
夏樹は、どこかに走り出した。


