あんまりしゃべったことのない私に

とって、些細な豹変でも驚くのだ。

「ふぇ?あ、あの・・・」

 間抜けな声を上げる私。

 怖くって、泣きそうな顔になる。

「・・・わりー!ビビらすつもり無かっ

たんだけどさ。ごめんなっ!」

 そうしてまたニッと笑う。

 んん?爽やかだ。怖いっていうのは前

言撤回。

 ほっと息をついて、会議室を後にし

た。

【涼斗side】

 何で逃げんの、と言った時、紅音は

泣きそう顔だった。

 肩をかすかに震わせていた。

「やっちまった」

 困らせるつもりも、泣かせるつもり

も全くなかった。

 紅音はもう帰っていて、俺は一人会

議室で後悔していた。